腕を上げる

筋肉への手技で痛みに効果がある理由を少し。

「筋肉」への施術しか請け負わず、「骨」の矯正はナンセンスだと言い、『自分の仕事はあくまでリラクゼーション』と言っている私ですが、たまには、筋肉への手技によって腰痛が消えたり、肩が上げられるようになったりすることがある、その理屈について書いてみます。

肩甲胸郭関節

肩甲胸郭関節

肋骨の上に肩甲骨が乗っています。
肋骨が集まって胸郭という籠のような構造を作り、
内臓を守っています。

肩甲骨と胸郭の間にも関節があり、
これらも腕を上げるときに関与します。

(画像と引用:古東整形外科・内科/肩関節の構造 )

関節と言うと、「肘」や「膝」のような、曲げたり伸ばしたりできる部分がイメージしやすいですが、
肩甲骨も、スライドするように、「せり上がる」「開くように回旋する」「内側に引き寄せる」などなど動かせるという意味で「関節」と言うことができます。
肩甲骨が回旋するというのは、例えばカブトムシの羽が開く時のように、支点があって外へ開くイメージです。

カブトムシ

肩甲上腕リズム

肩甲骨と胸郭(肋骨)の間の関節は「肩甲胸郭関節」とも呼ばれますが、
普通、皆さんが「肩関節」と言う場所は、肩甲骨と上腕骨の間の関節のことで、こちらは「肩甲上腕関節」と言います。
そして、腕を頭上に挙げる動きをする時には、肩甲上腕関節=肩関節だけではなく、肩甲骨そのものも連動して動きます。
この連動や比率を「肩甲上腕リズム」と呼んだりもします。

肩甲上腕リズム

(画像:肩甲骨の動きが歩行をスムーズに )


連動を取り戻して負担を軽く

骨と骨が作る「関節」の話をしていて、「筋肉」から遠ざかったと思ったかもしれませんが、実は筋肉も関係しています。
例えば、肩甲骨を動かす筋肉には「僧帽筋」や「菱形筋」や、肋骨に付く筋肉(前鋸筋や小胸筋)がありますが、
指や肘のように曲げたり伸ばしたりする関節ではない肩甲骨周辺の筋肉は、柔軟性を失いやすい。
「同じ姿勢」「自分の腕の重さを支えるため」「大きくは動かさず、小さな動きによって疲労する」などの理由から、肩甲骨周辺の筋肉の柔軟性が失われると、肩関節との連動に支障をきたすのです。

これは、あくまで例として肩甲骨で説明しているだけです。
他の、体のどこでも、どこかを動かそうとした時に、連動する場所があって、それが筋肉とつながっているという事があるということを説明したいのです。
連動するべき場所が硬かったり、「伸びなかったり」すると、動かしたい関節は窮屈になります。動きが大きくて可動域が広ければ負担は一点に集中しないのですが、窮屈だったり角度を変えられないと、痛みが出やすくなります。
ですから、「スムーズ」に「自由」に体を動かせる様に、つながりや連動を考えて全身的に筋肉を調整することで、ある一点の負担を分散させて軽くすることを狙えるということです。
同じ理屈で、腕の筋肉をゆるめることによっても、肩への効果を狙えます。

腕を上げる

筋肉の名前や専門用語から離れてイメージしてみましょう。
腕を高く上げようとすると、着ている服にシワができたり、お腹が見えたりしますよね?
ということは、腕を上げる時には、腋の下や、肋骨の間や、体の横の筋肉は、伸ばされたり引っ張られたりしているということです。
体の連動とはシンプルにこういう事でもあって、どこかの負担を軽くするために、けっこう広い範囲で筋肉をほぐすことの意味がイメージしていただけるでしょうか。

「腰を曲げる」のではなく、「股関節を曲げる」

少しだけ「腰」のことを。
次の画像を見てください。

「く」の字

先に言うと、これはすべての人の「腰痛」には当てはまりません。
このパターンを例にして、やはり体の連動や負担の集中について説明するだけです。
上の画像のような座り方が「姿勢が悪い」ということは、皆さんも知っていると思います。
これはこれで、腰が痛くなるかもしれませんね。
問題は、「股関節」がしっかり屈曲していないことです。
でもこれが「良くない姿勢」なことは知っているし、顔が後ろにのけ反っていては色々な作業もしにくい。
だから「私はそんな座り方をしていない」と言う人が多いと思います。
では、次の画像を見てください。

「C」の字

写真自体は同じものですが、赤い線を変えています。
「股関節」の角度は変えずに、それより上の「腰」や「背中」を丸くすることで、顔や腕を前に持ってくるように座っている人がいたとします。
それだと、その人は作業ができるかもしれませんが、股関節はやっぱり屈曲していません。
腹筋が弱いからかもしれないし、お腹が出ているからかもしれません。お尻や太ももの後ろの筋肉が伸びないのかもしれません。
そうすると、「腰」や「背中」をより丸めて体を前に持っていくのですが、これはかえって腰や背中に負担をかけますし、頭や首が前に重みをかけるので、肩や首がこります。
私の場合は筋トレや姿勢の指導を仕事にしていませんので、何ができるかと言うと、
丸まって突っ張った背中や腰の筋肉をゆるめたり、お尻や太ももの後ろの筋肉をゆるめたりすることで、負担のかかるポイントを一点でなくすることを目標にして手技をします。
この例の逆に、股関節の前面の筋肉が伸びなかったり、腰が反るような筋肉の緊張をしている人の腰痛もあります。

手技療法は「試みる」ものであって結果を約束しない

筋肉を押したり伸ばしたりすることで痛みが消えたり動きが軽くなることがある理由は、他にもあるかもしれませんが、今回はあくまで「例えばこんなこと」ということを書きました。
私は、「筋肉ほぐし」や「手技療法」は、施術する前から「腰痛を治します」と約束することは不可能なものだと考えています。体や筋肉に触り始めてから、硬さを確かめ、緊張を読み取り、また、どこの筋力が弱いのかを見つけ、力の拮抗や連動の不調和を「探していく」ものだと思います。
その時に、ほぼ全身的に確かめさせていただく為には、「信頼関係」が最重要だと思います。
私が、「治すとは言わない」で「気持ち良さが大事」だと言うのは、そういうことでもあります。
先ずは、「安心して体に触れさせられる人かどうか」が大事ではないでしょうか。
リラクゼーションを大前提にしながら、「できるだけ、楽になるように頑張ってみます。」

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