鍼灸の経絡および経穴図

鍼はプラセボにすぎない③ ~鍼灸師の反論~

前回までで、
考え得るバイアス(先入観、色眼鏡)を取り除き、
プラセボ効果(思い込み)ではない、実の効果があるかを検証した時、
鍼治療には、ほとんど効果が無く、「いくつかの痛みには効果があるかもしれない」レベルである事を書きました。

少なくとも言える事は、
例えばマッサージでは治せないような、または医師でも簡単には治せないような病気・症状を、
「治療しましょう」「治せます」と言ってしまう鍼灸師に対しては、警戒した方がよいかもしれません。
ここで私が言う「病気」とは、「こり」や「痛み」や「ケガ」や「筋肉」以外の、いわゆる「疲労でもケガでもなく病気」と言われるものです。

鍼灸の効果?

これは鍼灸院に限ったことではなく、カイロプラクティックにも整体院にも言えますが、
治療範囲を大袈裟に、誇大広告している代替医療の「治療家」というのは、とても危険です。
そういった「先生」は、一般医療に批判的なことが多く、自分ならば治せると豪語しがちで、
効果が無かったりリスクが高い治療をしますが、その事によって効果のある一般医療から遠ざけてしまう危険があります。
仮にプラセボ効果によって患者も治った気になったとしても、「とんでも理論」を持ち出すような代替医療の治療家を主治医であるかのように信じ込むのは危険なのです。

鍼灸の経絡および経穴図

予想できる鍼灸師からの反論:その1
「痛みや筋肉に対しての治療なら、効果もあるし、文句もないだろう」

実際には、ちょっとネットで検索すれば、広範の病気・症状への効果を謳っているホームページに当たりますが、
鍼灸接骨院の中には、「あくまで筋肉をほぐしたり、痛みを取り除くという事を謳っている」というところもあるでしょう。
そして、「マッサージや整体では不可能な効果があります」と謳っているでしょう。

たしかに、「病気」はともかく、「痛み」に関しては臨床試験でも多少の効果が認められています。
「疑わしきは罰せず」のレベルですが。

また、患者側の感想としても、「鍼で痛みがなくなった」
という実体験がある方も少なくないのでしょう。

しかし、その効果、その結果(メカニズムはともかく患者の痛みはやわらいだ)を、
鍼灸師は患者に、どのように説明しているか?
または、患者への説明と鍼灸師の本音が異なる場合があるのだとしたら、
鍼灸師は、鍼が患者の痛みを軽減する理由を、実際にはどんな理屈だと思っているのか?

「気の流れ」だとか、「経絡」「経穴」だとか、「陰と陽」だと言うのだろうか?

もし、その説明なら、あやしいとしか言えない。
たとえメカニズムが解明できなくても、もし、その中国の理論が正しいのなら、
効果の範囲は「痛み」のみじゃないはず、ではなかったか?
中国の理論で説明するのなら、様々の病気にも効くことになってしまうが、それは事実ではない。

委中(いちゅう)

委中(いちゅう)

というツボ(経穴)があります。
腰痛や足のむくみに効くとされています。
中国のツボだから効かない、ではなくて、なぜ効くのかを軽く説明してみます。
このツボは膝の裏の真ん中にありますが、膝の裏は、目で見てわかるように血管が体表に近い。
ここの血流が良くなれば、その上下、腰も下腿も血流が良くなるので、むくみにも効く。
また、腿(もも)の裏の筋肉は膝の関節をまたいで付いてる。
膝の裏をゆるめれば、腿の裏の筋肉がゆるむ。
腿の裏の筋肉は上部では骨盤にも付いている。
よって、膝の裏の血流を良くしゆるめることが、腰痛に良い効果をもたらす可能性は、十分にある。

上の説明は、本に書いていたことではなく、私なりの説明です。
本心を言えば、こういう「説明の仕方」は易々と書きたくはない。

しかし、例えばこのように、
解剖学や血流で理論的に説明できる先生で、
基本的に「痛み」の治療のみを謳っている鍼灸師であれば、悪い先生ではないかもしれません。

呪術師

予想できる鍼灸師からの反論:その2
「プラセボ効果でも、効果が出ているなら良いじゃないか」

これは鍼灸師だけではなく、鍼治療を信頼している患者からもありそうな反論ですが、
私は同意できません。

かつて、「瀉血(しゃけつ)」という治療法が、広く信じられていました。
血液を外部に排出させる治療法ですが、現代の観点からは医学的根拠は無かったとされます。
「血液のよどみが病気の原因である」と考えられていたそうですが、臨床試験により、
効果が無いことがわかりました。
正確な臨床試験が行われなかった時代、この治療法で「治した」「治った」という「都合の良い結果」だけが伝えられ、
その裏では数えきれない人の命が奪われました。
血液は循環するものですから、「汚い血を抜き取れば病気が治る」など、根拠がないのです。

では、鍼治療とプラセボ効果の関係はどうでしょうか?

「医者は薬を出すばっかりで、体に触れもしないじゃないか。
鍼の先生は、体に鍼を刺してくれるし、やってもらった感覚がある。」

この様な、
医師への失望のカウンター効果や、「儀式」感による、プラセボ効果が鍼の効果のすべてだとして、
それは開き直って良いことなのか。
確かに、瀉血のように、その行為自体が命を奪うようなリスクは鍼治療にはない。
しかし、プラセボ効果(思い込み)だけの治療法を信じ切ることによって、
本当に受けるべき医療を受けられないというリスクはかなり高い。

プラセボだろうが何だろうが、何もしないよりは効果が出る(と信じ込む)のなら、良いじゃないか!
と言って、「体に鍼を刺すという儀式」をすることによるプラセボ、暗示にかける。
鍼が「経穴」に届くから効くという理論はなかったことにして、
鍼が体に突き刺さるという、プラセボ増幅器としての鍼を使って、患者を心理作用にかける。

これでは、「マジナイ師」「呪術師」と変わらないことになるが、鍼灸師的にはそれで良いのか?

私個人の意見としておくが、
やはり、プラセボだけじゃない効果があることを説明するべきだろう。
中国の理論のような「とんでも理論」以外で。
もし、その説明ができないのなら、患者を騙すべきではないと思う。
あやしげな魅力と儀式感でプラセボ暗示にかけるのではなく、
あくまで、実の効果の「おまけ」や相乗効果として、プラセボを考えるべきだろう。

マジックナイフ2

予想できる鍼灸師からの反論:その3
臨床試験そのものに対する疑問

前回の投稿で、
鍼がプラセボ効果以上の実の効果を持たないことを証明する臨床試験を紹介した。

鍼はプラセボにすぎない② ~鍼への臨床試験~
http://tanagokoro.pupu.jp/?p=1106

詳しくはそちらを読んでいただきたいが、
「偽鍼といっても、皮膚に浅く刺さる(触れる)のだろう?
であれば、経穴に軽くでも刺激があった事で効果が出たのかもしれない」

という反論があるようだ。
これはおかしいと思う。
鍼灸師は、
「指圧やマッサージでは届かない経穴に鍼を打つから効果があるのだ」と言う。
少しでも皮膚に触れれば効果があるのだとしたら、上の主張は崩れる。

軽く触れるだけでも、タッチでも、マッサージでも、鍼と同等の効果が発揮できるということになる。
苦し紛れにも程がある。

最後に、「中国ではこんな実験結果も報告されている」なんて意見が反論にもならないのは言うまでもない。
厳格で厳正な臨床試験によって導き出された結論の持つ威力については、
これまでの投稿で説明した。

↓続きはこちらです
鍼はプラセボにすぎない④ ~では、マッサージは?~
http://tanagokoro.pupu.jp/?p=1148&

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